「せっかく買った万年筆なのに、インクが最初から出ない…」そんな経験、ありませんか? 新しい万年筆を手に入れた喜びも束の間、いざ書こうとするとインクが出なくてがっかりしてしまうことは少なくありません。
この記事では、万年筆のインクが最初に出ないよくある原因を徹底解説し、すぐに実践できる具体的な解決策を3つご紹介します。 万年筆を初めて使う方でも、安心して使えるように、分かりやすく丁寧に説明していきますね。この記事を読めば、あなたの万年筆ライフがきっと豊かになりますよ!
万年筆のインクが出ない!「初期不良」ではない理由とは?
新しい万年筆のインクが出ないと、「もしかして不良品?」と思ってしまいますよね。しかし、ほとんどの場合、それは初期不良ではありません。万年筆が本来の性能を発揮できるようになるまでには、いくつかのステップが必要なのです。
新品の万年筆にインクが馴染まないのはなぜ?
新品の万年筆は、製造工程でペン先に残った油分や汚れ、あるいは乾燥を防ぐためのコーティングが施されていることがあります。これらがインクの流れを妨げる原因になるんです。
- 製造時の油分や微細なゴミ: ペン先やインク経路に付着していることがあります。
- インクの表面張力: 細い毛細管現象でインクが吸い上げられる万年筆にとって、インクの表面張力が妨げになることがあります。
- 乾燥防止剤: 新品のペン先の乾燥を防ぐための液体が残っている場合もあります。

万年筆のインクが出ない!解決策3選をプロが伝授
それでは、万年筆のインクが最初から出ない問題を解決するための具体的な方法を3つご紹介します。これらの方法を試せば、ほとんどのケースでインクがスムーズに出るようになりますよ。
ペン先を「水洗い」してインクの通り道を確保する
最も効果的で基本的な解決策は、万年筆のペン先を丁寧に水洗いすることです。これにより、製造時に付着した油分や乾燥防止剤などを洗い流し、インクがスムーズに流れる道を作ってあげます。
準備するもの
- 清潔な水(ぬるま湯でも可)
- 清潔な布やティッシュペーパー
- 必要であれば、ペンクリーニングキット
水洗いの手順
- 万年筆からインクカートリッジやコンバーターを外します。
- ペン先(ニブ)を水を入れた容器に浸します。
- 数分間浸した後、水中で軽く振って内部の汚れを洗い流します。必要であれば、コンバーターを装着し、水を入れたり出したりしてインク経路を洗浄します。
- 水から取り出し、清潔な布やティッシュで水分をしっかり拭き取ります。ペン先の溝(スリット)の水分もティッシュの角などで優しく吸い取ると良いでしょう。
- 完全に乾くまで数時間放置します。

ペン先の「書き出し」を慣らす・インクを吸い込ませる
水洗い後もインクが出にくい場合は、ペン先を「慣らす」作業が必要です。これは、インクをペン先にしっかり吸い込ませ、毛細管現象を促すための作業です。
インクをしっかり吸わせる方法
- 万年筆にインクをセットしたら、ペン先を下にしてしばらく(数分~数十分)立てて置きます。重力でインクがペン先に到達しやすくなります。
- 柔らかい布やティッシュにペン先を軽く押し当てて、インクを吸い出させるようにするのも効果的です。
- 紙の上でゆっくりと文字を書いてみましょう。最初は薄いかもしれませんが、少しずつインクが流れ出すことがあります。
書き出しのコツ
- 筆圧をかけすぎない: 万年筆は筆圧をあまりかけなくても書ける筆記具です。無理な力を加えるとペン先を痛める原因になります。
- インクの色を濃くする: もし薄い色が出ている場合は、そのまま書き続けることでインクが濃く安定してくることがあります。
「インクカートリッジ」の取り付けを確認する
意外と見落としがちなのが、インクカートリッジやコンバーターの取り付けミスです。しっかりと装着されていないと、インクがペン先に供給されません。
取り付けの確認ポイント
- カチッと音がするまで差し込む: カートリッジやコンバーターを差し込む際、奥までしっかり押し込み、「カチッ」という音がするまで入れましょう。
- 隙間がないか確認: 万年筆本体とカートリッジ・コンバーターの間に隙間がないか確認してください。隙間があると空気が入り込み、インクの流れを妨げることがあります。
- 一度外して再度装着: もし不安な場合は、一度外して再度丁寧に装着し直してみてください。

万年筆のインクが出ない時の「やってはいけない」注意点
万年筆のインクが出ないからといって、焦って間違った対処をしてしまうと、万年筆を傷つけてしまう可能性があります。ここでは、絶対にやってはいけないことをお伝えします。
ペン先を無理やり開く・広げる
インクが出ないからといって、ペン先(ニブ)の溝(スリット)を無理やり開こうとしたり、広げようとしたりするのは絶対にやめましょう。万年筆のペン先は非常に繊細で、少しの力で簡単に変形してしまいます。一度変形してしまうと、修理が難しくなるだけでなく、書き味が著しく損なわれる原因になります。
- 変形による書き味の悪化: ペン先が歪むと、インクの出が悪くなるだけでなく、カリカリとした不快な書き味になってしまいます。
- 修理の困難さ: 専門家による修理が必要となり、高額な費用がかかることもあります。
過度な筆圧をかけて書く
インクが出ないからといって、紙に強く押し付けるように筆圧をかけて書くのも避けましょう。これもペン先を痛める原因になります。万年筆は軽い筆圧でもインクが出るように設計されています。強い筆圧は、ペン先の摩耗を早めたり、スリットの開き具合を変えてしまったりする可能性があります。
- ペン先の摩耗: 不必要な筆圧は、ペン先の寿命を縮める原因になります。
- インクフローの悪化: 押し付けすぎると、かえってインクの流れが悪くなることもあります。

万年筆のインク詰まりを防ぐ!普段からできるメンテナンス方法
万年筆を長く快適に使うためには、普段からのちょっとしたメンテナンスが非常に重要です。日頃から気をつけることで、インクが出ないトラブルを未然に防ぐことができます。
定期的な洗浄でインク経路を清潔に保つ
最も効果的な予防策は、定期的な洗浄です。特にインクの色を変える際や、しばらく万年筆を使わない場合は、必ず洗浄するようにしましょう。これにより、インクの固着や詰まりを防ぎます。
- 月に一度の洗浄: 毎日使う万年筆であれば、月に一度を目安に水洗いすることをおすすめします。
- 異なるインクへの変更時: 色の違うインクに交換する際は、必ずペン先を洗浄してから新しいインクを入れましょう。混じり合うことで、インク詰まりの原因になることがあります。
- 長期間使用しない場合: 2週間以上使わない場合は、インクを抜いて洗浄し、乾燥させて保管するのが理想です。
乾燥を防ぐ!正しい保管方法
インクの乾燥は、インクが出なくなる大きな原因の一つです。正しい方法で保管することで、この問題を避けることができます。
- キャップをしっかり閉める: 使用後は必ずキャップを「カチッ」と音がするまでしっかり閉めましょう。キャップが緩いと、空気と触れてインクが乾燥しやすくなります。
- ペン先を上にして保管しない: ペン先を下にして立てて保管するか、横置きにしましょう。ペン先を上にして保管すると、インクがペン先から遠ざかってしまい、乾燥しやすくなります。
- 直射日光や高温多湿を避ける: インクの劣化や乾燥を早めるため、直射日光の当たる場所や、高温多湿の場所での保管は避けましょう。
まとめ
今回は、「万年筆のインクが最初出ない」というお悩みを解決するための具体的な方法と、万年筆を長く愛用するためのメンテナンス方法について詳しく解説しました。
インクが出ない主な原因は、製造時の油分や乾燥、インクカートリッジの装着ミス、そしてインクの固着です。これらは決して初期不良ではなく、ご紹介した「水洗い」「書き慣らし」「取り付け確認」の3つの方法でほとんど解決できます。
また、万年筆は繊細な筆記具ですので、無理な力を加えたり、ペン先を無理に開いたりすることは絶対に避けましょう。定期的な洗浄と正しい保管方法を実践することで、インク詰まりを防ぎ、あなたの万年筆をいつまでも最高の状態で使い続けることができます。
万年筆は、一度手にするとその書き味の魅力に引き込まれる素晴らしい筆記具です。この記事が、あなたの万年筆ライフをより豊かにする一助となれば幸いです。もし他に万年筆について気になることがあれば、いつでもご相談くださいね!
【参考資料】